「大丈夫か?」


となりの新田くんが、優しく声を掛けてくれた。


あの夢のような出来事を体験したのに、新田くんは落ち着き払っていて、さすがだ。


あれは、現実じゃない世界で起きたこと。


いってみれば、ゲーム。ただのしりとりゲームだ。


本当に起きるなんてことは、ありえない。


そもそも、ただしりとりに失敗しただけ。それで串刺しにされて殺されたんじゃ、たまらない。


「うん、なんとか」


笑顔で答え、教室中央の明香にも微笑みかける。


なんにもなくて、良かったね__と。


賢太も悠馬も、今回ばかりは真っ青な顔をしているけど、ぜんぶ取り越し苦労だ。


だって明香は、あの通り生きてるんだから。


「じゃ、遠藤。これ解いて」と、先生が明香を名指しする。


わずかに頷いた明香が、黒板に書いてある問題を解こうと立ち上がった。


あの程度の問題、明香ならすぐ解けるだろう。


「遠藤?どうした?」


先生が首を傾げ、みんなの注目が集まる。


「__明香?」


顔色が優れないのは、やむを得ない。だって殺されかけたんだから。


明香が私を見た気がするけど、その目は虚ろで遠くを見ていて__。


「がっ!」


突然、明香の体が小刻みに震え出した。


そして次の瞬間、首から血を噴き出したんだ。