教室に戻った悠馬は、黒板の横に近づく。
なにやら手で剥がしているように見えた。
「ほらよ」
指先で摘んでいるのは、生徒がイタズラで壁に貼った「シール!」だ。
『クリアです』というアナウンスと同時に「冗談でしょ?」と吐き捨てるように言ったのは、明香だった。
「あっ」と、悠馬が口を開けたまま、ちょっと目を伏せた。
「悪りぃ」
「信じられない」
明香がむすっと怒っているのには、わけがあって__。
次は【る】だ。
前回も明香は【る】から始まる言葉を探した。
知恵を振り絞って『留守番電話』でクリアしたけど、同じものは2回使えない。
しりとりの鬼門。
謝ったところを見ると、悠馬はわざと2回続けて【る】で終わるものを選んだわけじゃない。そんな器用なこと、悠馬にはできない。
1度目は悩みに悩んで『プール』、2度目はとっさに思いついたから『シール』となっただけ。
たまたまなんだ。
「もう、思いつかない」
まだ制限時間は半分以上あるのに、明香は探す気がないのか諦めたのか、どこか投げやりだった。
「まだ時間あるよ」
私はそう言って励ましたけど__。
「じゃ、なにかある?」
逆に怒って聞き返されてしまった。



