『次は【り】で始まるものを探してください』
アナウンスと同時に、私は自分のかばんを引き寄せた。
リップを掴んで、ふと思う。
まだ時間は【09:40】と、たった20秒しか経っていない。
これですぐ答えると、怪しまれないか?
明らかに前もって仕込んでいると疑われるんじゃないか?
ちょっとくらい、探す振りをしたほうがいい?
目だけで問いかけるが、みんな黙って私を見ている。
ええい、もうどうにでもなれ!
「リップ!」
声高く突き上げると『クリアです』と、難なく合格だった。
次は、賢太のプリクラだけど__?
その賢太は俯いたまま、動かない。
もう順番はきているのに、探す素ぶりもない。
「どうしたの?」
明香が眉をひそめて尋ねる。
賢太はどこかモジモジしているように見えて、かばんをぎゅっと胸に抱きしめていた。
「早く出せよ!」
横から悠馬が、かばんを引っ張る。
それを賢太が渡すまいと抵抗していて__一体なにを取り合っているのか?
でもすぐに、かばんは悠馬のもとに。
かばんを逆さに振ると、筆記用具に混ざって1枚のプリクラが。
「拾えよ!」
悠馬に小突かれ、賢太が渋々といった様子でプリクラを拾った。
消え入りそうな声で「プリクラ」と言う。
すぐに『クリア』の声が届いたけど__。