私は、高校に進学した。


あの『惨劇』を誰も知らない、遠くの高校に。


「中学はどこ?」と聞かれたら、隣の中学校を口にした。


それでも「そこって、あの事件が起こった隣町?」と興味本位で顔を輝かせるクラスメイトばかり。


なにも知らないと私が言っても『事件』というものに惹かれるらしい。


目の前で、あれを経験していればそんな無責任なことは言えないはずなのに__。


だからというわけでもないけど、入学して以来、私はクラスメイトと距離を置いていた。


打ち解けることができなかったんだ。


仲良くしていた友達、好きになったひとが、ゲームによって2度と手の届かないところに行ってしまう寂しさ。


それは、味わった人間にしかわからない。


「あっ、田辺さん」


そう声を掛けてきたのは、クラス委員の女子だった。


いつも1人でいる私のことを、なにかと気遣ってくれる。


「田辺さんて、ゲームとか好き?」


「ゲーム?」


「そう。みんなでやろうって言ってるんだけど、人数が1人足りないから、やらないかなって思って」


いつもならやんわり断るけど、あまり断ってばかりも悪いと思って、誘いを受けることにした。


みんなの元に行くと、スマホでなにやら操作している。


「みんな、田辺さんもやるって」


「どんなゲームなの?」


私は何の気なしに尋ねた。