はさみ。


私は、はさみを手に取った。


家庭科室にあった、布きりばさみだ。


布に当てて手を押し出すだけで、すーっと断ち切ることができる。


持ち手を動かすと、しゃきんと小刻みいい音を出す。


私が一言『はさみ』と言うだけで、ゲームは終わりを告げる。


まだ残り時間は半分あった。


これまでのことが、走馬灯のように蘇る__。


この年で『しりとり』をやるなんて。でもみんな、どこか楽しそうで浮ついていた。


悠馬なんかパンツを脱いで、それをみんなで笑ったっけ。


明香が、ゲームを100%クリアする方法を思いついて、順調にポイントを重ねていった。


だから死り神が現れたときは、本当に驚いたんだ。


明香と悠馬が失格になり、響子まで死り神になって。


みんな、居なくなった。


気づけば、私だけ。


どこを見回しても、ここには私しかいない。


賢太が、なにもかもを壊したからだ。


みんなの命を奪い取り、ゲームから去っていった。


そう仕向けたのは、この私だったけど__。


私は、両手で握りしめていたはさみを、持ち替える。


刃の部分を握ったんだ。


そして、窓ガラスを叩き割った。