響子の言葉に、賢太は露骨に顔をしかめた。
プリクラなんか、撮ったことがないのだろう。
「帰りに俺が一緒に撮ってやるよ!」
「えっ、いいよ」
「遠慮するなって!」
悠馬に強引に肩を抱き寄せられ、賢太は困っている。
でもこれで決まった。
次は【ら】だ。
「んじゃ、俺はこれな」と、悠馬がポケットから取り出したのは、ライターだった。
火をつけたり消したりと、その手際はいい。
なんで中3の悠馬がライターなんか持っているのかは、あえて知らん顔をする。
そんな私たちの気遣いを、悠馬が打ち砕く。
「次は【た】だから、これ使えよ」
そう言って明香に差し出したのは、タバコだ。
「いや、ライターだから【あ】でしょ?」
「タだろ?」
「アだって!」
不毛な言い争いが始まった。
私たちも、どっちが正解かわからない。
普通のしりとりだと『ライター』だから【あ】のような気がするけど__?
「それなら、ふた通り用意しとけばいいだろ?」
新田くんが、2人の間に割って入る?
「ふた通りって、そしたら次もまたふた通り用意しなくちゃいけないじゃない」
明香が不満を口にすると、新田くんは涼しい顔で微笑んだ。
「あんこ、でいいじゃないか」



