「開けて!ここを開けてくれ!」
屋上の扉をがんがんと叩く音は、町中に響き渡っている。
すぐに、死り神の耳にも入るだろう。
放っておけば、死り神がやってくるはずだ。
「くそっ、開けろ!」
私たちが開けるつもりがないのを察したのか、賢太が体を扉にぶつけ始めた。
扉が開かないよう、つっかえ棒がしてあるけど__。
「やばい、開くかもしれない」
私たちは、慌てて扉に駆け出した。
押し上げられようとしている扉に体を押し付けるけど、新田くんは肩を負傷しているし、私は力は弱いし、賢太は死に物狂いだ。
「くそっ!」
最後の一押しで、扉が開いた。
屋上に転がり込んできた賢太は、カッターを持っている。
どのみち、私たちを殺す気なんだ。
超人的な死り神と戦うより、そのほうが簡単だからだ。
「こ、こないで!」
それでも少しずつ距離を詰めてくる賢太。
「殺さないで!」
そう言って、私は両手を突き出す。
武器は『ドライバー』しか見つからなかった。
一本の心もとないドライバー。
「田辺、もういい」と、新田くんが私を制する。
「俺はもう、疲れた」
「新田、くん?」
「もう、疲れたんだ」