まだ呆然と突っ立っている賢太に一歩、詰め寄る。
「キスするから、殺さないで。タオルで死りとりをクリアして」
「うん?まぁ、そこまで言うなら考えないでもないけど」
「もう時間ないでしょ⁉︎はっきり決めてよ!」
私の剣幕におされ「わ、わかったよ」と賢太が言った。
私たちは向き合う。
身長は私のほうが少し高いため、膝を屈めた。
キスさえすれば、死りとりは続く。
負傷している新田くんは戦えない。だからこうするしかないんだ。
好きなひとを助けるために、好きでもないやつとキスをするしか道はない__。
「ちょっと、目、閉じてよ」
「えっ?」
「ガン見しないで。普通、閉じるでしょ?」
「あっ、ごめん」
情けない声で謝る賢太が、ゆっくり目を閉じた。
瞼がぴくぴく震えている。
まさか、こんなやつとキスしないといけないなんて。
こいつは正真正銘の裏切り者だ。
こんな腐ったやつとキスを__。
唇までの距離は5㎝。
4㎝。
3㎝。
熱い鼻息が顔に触れた。
2㎝。
ごくり。
賢太の喉仏がうごめく。
1㎝。
唇と唇が触れ合う。



