罰が当たったんだ。
生きるために殺すのは、仕方がない。そうしないと死んでしまうから。
でも、新田くんを自分のものにしたいという邪(よこしま)な考えは、身を滅ぼす結果になる。
「田辺!」
新田くんが、叱りつけるように名前を呼んだ。
それでも、私はナイフを突き出すことができない。
たとえ罪に問われないとしても、新田くんを奪い取ることができるとしても__腕が動かないんだ。
ゆっくり、本当にゆっくり、死り神の持っている鎌が持ち上がる。
目線の高さを超え、見上げる高さまで到達する。
それでもなお、私は動けずにいた。
『勘違いは、顔だけにしてね』
めぐみの言葉が、頭の中でリフレインする。
すると、指先が少しだけ動いた。
血が巡っているようで、脳が『刺せ』と言っている。
それは、刺さなければ死んでしまうという防衛本能なのか、刺せば欲しいものを独占できるという欲望なのかは分からない。
指令が体に伝わっていくのが分かる。
でも、あと一つだけ分かることがあった。
もう、遅い。
鎌が振り下ろされようとしているから。
やっぱり私は殺せない。



