制限時間内に、殺す?
人間の言葉がわかるはずないのに、腕の中のぴょん太が震えだす。
「そんなの、無理」
そう言って、ぎゅっと抱きしめる。
確かな命が、ここにある。
これを押し潰すなんてこと、私にはできない。
「田辺、時間がないぞ」
新田くんは、厳しい表情で私を急かす。
でも『うさぎ』が閃いたとき、その他のものは頭から消え去ってしまったんだ。
今からはもう、なにも思いつかない。
「史恵、もうあと3分だよ!」
3分で『ぴょん太』以外のもを探し当てる自信はない。
残された道は、1つ。
この子を、殺すしかない__。
「ふ、史恵⁉︎」
響子の声も無視して、私は駆け出した。
小屋からすぐ近くに【技術室】がある。中に飛び込むと、台の上にぴょん太を放つ。
呑気にぴょこぴょこと飛び跳ねる、可愛らしい兎。
今から私は__それを叩き潰すんだ。
工具をあさり、どれがいいのか選ぶ手が、激しく震えている。
「あと2分もないよ!」
もう時間がない!
適当に掴んだのは、特大の金づちだった。
これなら一撃で仕留めることができるだろう。
顔を上げると、新田くんが神妙に頷いた。
「あと1分!」
カウントダウンする響子の声に押されるよに、私は金づちを振り上げる。
なにかを感じたのか、ぴょん太が私を見上げた__。
ごめん。



