べつに、秋は嫌いじゃないんだけど。 秋になると表情を変えるこいつが 『キ ラ イ だ』 口パクをしても、舌打ちをしても、届かない。 それらは踊る葉っぱと一緒に、風にさらわれて――空中散歩の旅だ。 前は、もっと楽しかった。 いまより、こいつも笑っていた。 目の前でぼうっと突っ立っている、千秋くん。 ……ねぇ、笑ってよ、千秋くん。 私は、なくしてしまった彼との会話の手段を……探し続けている。 秋になると、格段暗くなる千秋くんと、笑いたいから。