溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


(ほんとにこんな地味なものでいいのかなぁ)

不安になりながら玉子焼きを作っているときだった。


「早いな、美華」


背後からいきなり声をかけられ肩がビクンと弾む。


「おはようございます」


振り返ると博人はパジャマのまま目をこすり、それから大きく伸びをした。目覚めたてで、まだ寝ぼけているような様子だ。

起き抜けでも見目麗しいなんてずるいなぁと思ったところで、自分がすっぴんだと気づいた。
地味だと公言していた顔だ。とはいえ、今さらどこかに隠す場所などない。

ところが、博人が目ざとくそこに反応する。


「おっ、すっぴんもかわいいじゃないか」


顔を覗き込みニヤッと笑う。


「やめてくださいっ」