溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


目線を和菓子から移してみれば、彼がやわらかな表情で肩を揺らしているではないか。

一緒にいる人の存在を忘れ、うっかりスイーツに夢中になっていた。しかも、相手は父親から紹介された大事な部下。
いくら断るのが前提の〝お茶会〟とはいえ、失礼だし恥ずかしい。


「ごめんなさい」


慌てて頭を下げると、彼が「いや」と軽く首を横に振る。


「そこまでおいしそうに食べる女性を初めて見たよ」


愉快そうに続けた。
不快感を覚えない言い方だが、恥ずかしいのに変わりはない。


「もう本当にすみません」
「想像をいい意味で裏切られたな」


それはどういう意味だろうか。いったいどんな想像をしていたというのか。


「もっとおしとやかな感じをイメージしてたよ」