溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


◇◇◇

ここから出たら、待ち受けるのは……。

夫婦同然。同じ寝室。
そう言っていた博人の言葉から考えられるのは、たったひとつしかない。

結婚を決意した以上、それを拒むのはナンセンス。気持ちが育っていなくても受け入れなければならないと、強迫観念にも似た思いでいた。

広いバスタブに鼻の下まで浸かりながら、美華の逞しい妄想が立派に花開く。

(あれがああなって、こうなって……)

ところが、ある時点までくると想像にも限界が訪れる。なにしろ未経験だ。

(ど、どうしよう!)

両足を踏ん張って湯船から顔を出してプハーッと息を吐くと、湯気で白く煙ったバスルームにその息遣いが響いた。


「なるようにしかならない、よね」


鼓舞するように自分に言い聞かせ、髪を乾かしてバスルームを後にする。

それでも緊張と不安でいっぱいなのに変わりはない。