溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


なんとか話題を見つけて取り繕う。それでも挙動不審ぶりに変わりはないが。


「いや、こっちこそ父が世話になっているからね」


目を細めると鼻に皺が寄るようで、屈託のない笑顔が爽やかだ。

ぎこちなく微笑み返したが、ふと素朴な疑問が湧く。

(……あれ? 部下ってだけじゃなく、お父さん同士も知り合いなの?)

部下だとは聞いているが、その彼の父親の話は出ただろうか。
なにしろ適当に聞き流していたため、よく覚えていない。


「あの、お父様も」


聞こうとしたタイミングでコーヒーと和菓子が運ばれてきた。


「わぁ、綺麗……!」


ひと目見た瞬間、そんな言葉が自然とこぼれる。

ネイビーブルーの寒天に銀箔が散りばめられ、まるで星空のよう。