「……うん、私もそのほうがいい気はする」
隣で博人が微笑む気配が伝わってきた。
「でも荷物の準備もあるし、今日からは難しいかな」
大がかりな引っ越しでなくとも、暮らすとなればそれなりに持っていきたいものがある。
「美華もこう言っておりますので、明日以降でいかがでしょう」
「十分です。では明日の夜、仕事が終わり次第迎えに参ります」
たったの二日で結婚も同居も決まるスピード婚。恐ろしい勢いで人生の指針が大きく変わったため、どこか他人事のようにも思える。
一昨日の自分には、到底予測もつかない未来が訪れた。
正隆と弥生は玄関先で博人を見送り、美華は車までやって来た。
「普段の美華もかわいいぞ」
藪から棒になにを言いだすのか。
博人は美華の頬をさらりと撫でた。



