溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


きっぱりと答える博人に迷いは感じられない。
膝に手を置き、ふたりを真っすぐに見た。


「その証拠にといってはなんですが、今日はこちらを用意しました」


博人が胸ポケットから長い封筒を取り出し、そこから折りたたまれた用紙を広げる。


「あらっ、婚姻届!?」
「え!?」


弥生の声に驚いて、美華もその用紙を覗き込んだ。

ドラマなどで離婚届は見たことがあるが、婚姻届のほうは初めて目にする。
夫となる人の欄には博人の署名がすでに記入され、証人欄も一方は書かれていた。

なんたる早業なのか。

(昨日の今日で婚姻届まで用意するなんて……)

美華が唖然とする前で、正隆と弥生は満悦の様子だ。博人の揺るぎない決意を見て安心したのかもしれない。


「こちらの署名をお父様にお願いしてもよろしいでしょうか」
「それはもちろんですが、そんなに急いで入籍しなくても」