溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


「初めまして。藤堂博人と申します。この度は突然のお話にもかかわらず、こうしてお時間をとってくださりありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ娘を見初めてくださり、ありがとうございます」


満面の笑みで弥生が言う隣で、正隆は「うむ」とばかりに頷いた。

白髪まじりの正隆はいわゆる塩顔系のあっさりした顔立ちをしており、美華は各パーツが大きく派手な顔立ちの弥生よりも似ていると言われる。
おしゃべりな弥生に対して、口数は少なめだ。よくバランスのとれた夫婦かもしれない。

お茶を淹れ、博人の手土産のケーキを取り分ける。
旬のびわを使ったタルトやイチゴがたっぷりのったプリン。見ているだけでワクワクしてくる。


「わぁ、どれがいいか迷っちゃうなー」
「本当ね。お母さん、どれにしようかしら」


弥生とふたりでつい夢中になって目移りしていると、正隆が咳払いをした。


「おい、ふたりとも恥ずかしいぞ」


ハッとして美華の隣に座る博人を見れば、クククと肩を震わせながら笑っているではないか。