溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


「いくつか適当に見繕ってもらえる?」


なかなか注文しない美華を見かねたか、じっと待っていた店員に男性が依頼する。
ハッとして彼女を見上げてみれば、困ったような顔から一転、笑顔を浮かべた。


「はい、かしこまりました」


元気よくテーブルから立ち去る店員に〝待たせてごめんなさい〟の意味を込めて頭を下げる。


「すみませんでした。ありがとうございます」


機転を利かせてくれた男性にお礼すると、彼はにこやかに微笑んだ。

改めて真正面から見た彼は、横顔から想像していた以上の顔立ちをしていた。イケメンという軽い言い回しよりも、容姿端麗といったほうがふさわしい。

意思の強そうな目もとに今にも吸い込まれそうになる。
おかげでポーッとしてしまい、彼は不思議そうに首をかしげた。


「あ、あのえっと……父、父がいつもお世話になっております」