でもそれも当然だろう。紹介しようとした男性とは別の人との結婚話が、一夜にして持ち上がったのだから。

しばらくして我に返った母の弥生は、『そうなの!』と手放しで大喜び。大手企業の社長だと知るや否や、でかしたわね!といった調子だった。

なんて軽いのか。大事な娘が出会ったばかりの男と結婚しようとしているのに、引き留めるどころか大賛成だとは。

複雑な表情なのは正隆のほうだった。せっかく部下を引き合わせようとしていたのに、タイミングの悪さですれ違ってしまったと。

それでも、これまで男っ気のまったくなかった美華が、そんな話をもって帰ったのはうれしいようだ。
部下には失礼なことをしてしまったと気にしているみたいだが、終わりよければすべてよしと言って笑った。

美華の楽観的な性格は、両親からしっかり受け継いだらしい。

博人が早々に両親に挨拶をしたいと言うものだから、今日の午後、自宅に来る予定になっている。


「私、本当に結婚するのかなぁ」


ポツリと呟くと、それに返答するかのようにスズメが窓の向こうでチュンと鳴いた。