「着物姿の美華を見て、とっさに彼女だと思ったんだ」
なるほど。それでおしとやかな女性をイメージしていたわけだ。
正反対の美華には当惑したのではないか。
「まず言っておきたいのですが、私はそのお嬢さんのようにおしとやかではないですし」
「だから、それはわかってるよ」
即答されると、すっきりしない。
「今日は綺麗にしていますけど、メイクをとったらすごく地味な顔立ちなんです」
「へえ、いいんじゃない?」
とか言っておいて、素顔を見たとたん詐欺だと騒がないだろうか。
「料理は庶民的なものしか作れません」
「豪華だからいいってものでもないよ」
たまの家庭料理なら新鮮かもしれないが、毎日でも耐え得るのか。
「それに俺は、家事をすべて美華にやってもらおうと思ってない」
「……え?」



