溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


◇◇◇

フレンチを堪能した後、美華は博人の車で自宅前まで送り届けられた。


「で、決心はついたか」


停車した車の中で彼が尋ねる。

博人と結婚に向けて歩きだす決意。それは、店を出てからここまで繰り返し悩んだ難題だった。


「最後にひとつ聞いてもいいですか?」


目で頷く博人を待って続ける。


「今日のお見合いのお相手は、どんな方だったんですか?」


社長の彼に見合う女性だと察しはつくが、参考までに聞いておきたい。


「俺の父が懇意にしている老舗呉服屋のお嬢さん」


そういえば、と思い出す。ホテルで着物を濡らしてしまったときに、博人は『呉服屋の娘なのに』と言っていた。