溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


男性に肩をちょんと突かれ、我に返る。自分がなにをしにここへ来たのか危うく忘れるところだった。


「はい」


小柄な女性店員に窓際のテーブルへ案内され、美華たちはそこに腰を落ち着けた。


「俺はホットコーヒーだけど、キミはなににする?」
「私も同じもので。あ、それから」
「和菓子だろう? どれにする?」


男性がメニュー表を開き、美華の前に置く。

(なかなか気が利くじゃない)

そこには先ほどショーケースに並んでいた和菓子の写真がズラッとあり、それを見るだけでも目に楽しい。

(うわぁ、どれにしよう。こんなにあると迷っちゃうな……)

あれもこれもと目移りして、まったく決められない。

優柔不断なタイプではないが、スイーツに限っては迷いが出る。
できるなら全種類食べたいが、今日は着物のためそうもいかない。巻かれた帯のせいで、さっきからお腹周りが苦しくて仕方がなかった。