博人は「あぁ、あれか」と小刻みに頷く。
「さすがに高校のときからの腐れ縁だからな。そんなところを気にするなんて、美華はかわいいな」
「か、かわいくなんて……!」
なにを言うかと思えば。
不意打ちで『かわいい』は心臓に悪い。そんなふうに男性から言われたことがない美華には、ハプニングとも呼べる言葉だ。
「心配するな。真知子とはなにもない。あいつの旦那だって俺が紹介したんだ」
「べつに心配していませんから」
百パーセント心配していなかったといったら嘘になる。本音ではちょっとモヤッとした。
「いいね。いい傾向だ」
愉快そうに眉を上下に動かして博人がにっこり笑ったところで、真知子がテーブルへやって来た。
「注文は決まった? あんまり遅いから来てみたけど」
「あぁ悪い。そうだな……」



