溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


「まるでお見合いみたいな格好ね」


きっちりとしたスーツに着物姿のふたりは、彼女にもそう見えるらしい。


「まさにそうだよ。まぁ、相手は取り違えたけど」
「なにそれ」


ふふふと上品に笑う。やわらかく優しい雰囲気をした女性だ。


「ところで、予約はしていないわよね?」
「まあね。でもいいだろう?」
「予約なくしてここで食べられると思ってるの?」


女性がおどけた様子で聞くと、博人は破顔して「いいや」と答えた。


「でも、俺ならいつでも真知子(まちこ)には歓迎されると思うけど」
「ずいぶんと自信家ね」


事実、店内はほぼ満席状態。テーブルの数こそ少ないが、繁盛店のようだ。
彼女の言うように予約なしでは食べられない店なのかもしれない。