「……そんな簡単に決められないです。お互いに知らないことだらけですから」
知っているのは、名前と職業だけ。年齢すら知らない。
「それならこれから知ればいい」
ケロッとして言うが、あまりにも楽観的すぎる。
「とりあえず今日一日を俺にくれないか」
そう言うや否や、博人は車のエンジンをかけた。
シートベルトをするよう言われて、素直に応じる自分が不思議でならない。
いくらドアがロックされているからといっても、断固として拒否すれば博人だって諦めるだろう。
それをしないのは、そこに愛がないとはいえ、初めてのプロポーズに曲がりなりにも舞い上がっているせいなのか。
博人に促されて父親に連絡を入れると、相手の竹下は急きょ会社からの呼び出しがあり帰ったという。
また改めてと言われ、ひとまず曖昧に答えて通話を切った。頭の整理がつかないため、両親には帰宅してからきちんと話そうと思ったのだ。



