これまで平坦な人生を送ってきた反動なのか、いろんなことがいっぺんに起きた感覚だ。
「もう一度言うからよく聞いて」
博人が改まって体勢を整える。
「美華、俺と結婚しよう」
〝よろしくね〟と似たような軽い口調だったため、思わず快く〝はい〟と頷いてしまいそうになった。
なにしろこれまで出会った経験のない男前。それも社長。
そんな相手からのプロポーズに美華がポーッとなるのも仕方がないだろう。
「美華は、これからもご両親から結婚結婚と口やかましく言われるんだろう? それなら俺との結婚を決めてしまえば、それを回避できる」
博人の言葉に心が動かされたのは事実。
これからも両親から結婚をせっつかれる苦痛を避けられるのは、とてもありがたい。
でも、人生の中でも一大イベントと言える結婚をこの短時間で決められるわけがないのだ。



