弾かれたように博人を見ると、冗談を言っているような顔ではなかった。真剣な目をして、真っすぐ美華を見つめている。
会って一時間の人からプロポーズをされるという異常事態が勃発した。
(嘘でしょ……)
しかも、お互いに別の人とのお見合いを予定していた同士だ。
まばたきも忘れて呆然と博人を見る。
「わた、わた、私は……」
「落ち着いて、美華」
博人がクスリと笑いながら美華の肩をトントンとする。
これが落ち着いてなどいられようか。名前だって、ほんの数分前に知ったような相手だ。
いったん息を深く吸い込み、ゆっくり吐き出す。それで少しは気持ちの乱れが収まったようだ。
「私は、あなたの周りにいる女性のようにおしとやかでも上品でもないです。着物だって苦しいばかりで全然慣れてないし」
「知ってる」
「え?」
「だから、知ってる。カフェでのキミを見ていればね」



