「普段からインスピレーションは大事にしてるんだ。設計の仕事もそう。なによりもそれがものを言うからね」
「出会いは仕事とは違うと……」
「いや、同じだよ。第六感を刺激してくるものは、大きなツキを呼び込む。会って一時間もあれば、その人とフィーリングが合うかどうかはわかるよ」
博人とはこれで合っているのだろうかと、甚だ疑問である。
現に、こうして意見は噛み合っていない。
インスピレーションは絵本を作る上でも重要な要素。それがなければ話を書けないと言ってもいいだろう。
同じく物を作る設計という仕事でもそうだろう。
それは理解できる。
でも……。
膝の上で重ねた自分の手をじっと見つめて考え込む美華に、博人はさらなる衝撃的な言葉を投げかけた。
「美華、結婚しよう」
いきなり名前を呼び捨てにされたのもさることながら、先ほどの『キミを気に入ったから』の上をいく超重大発言に心臓が止まるかと思わされた。



