溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


美華自身もそうだが、彼だって同じだ。


「キミと同じく親に言われてね。諸事情で時間がなくて、いよいよこれが最後の見合いだと腹をくくったところだったんだ。でも気が変わった。キミとならいいかもって」
「……はい?」


さっきから、いったいなにを言っているのか。
結婚する気はなかったのに美華ならいいなどと、わけがわからなすぎる。

彼はハンドルに手をかけた状態で、屈託のない笑顔を美華に向けた。無邪気な表情からは、突飛なことを言っている自覚が微塵も感じられない。


「どこかに頭をぶつけましたか?」
「え?」


美華と会う直前に、とても硬いなにかに頭を強打したせいで思考回路のどこかに異常をきたしているのではないか。
そう考えるくらいにおかしな状況だ。


「どこにもぶつけてない。いたって正気だよ」


クスッと笑ってから彼が答える。
そうは言うが、正気でする話ではない。