溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


「開けてください」
「それは俺の話を聞いてから」
「それじゃ遅いです」


現に相手を待たせているのだ。


「その相手と結婚する気満々でここに来たというなら考えてもいい」


どうして上から目線なのか。そんな不満がつい顔に出て、眉間に深い皺が寄る。
とはいえ、今回の話が断る前提なのは事実である。


「ここへはお断りしようとして来ました」


美華が正直に言うと、彼の口角がぐっと上がった。想定していた通りの回答に満足したような表情だ。


「実は俺も見合いだったんだ」
「えっ……。お相手はどうされてるんですか?」
「ラウンジで待ちぼうけしてるって、さっき父親の秘書から連絡が入った」


なんと、お互いにお見合いにここへやって来たのに、相手を間違えて話し込んでいたらしい。


「行かなくていいんですか?」