溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


とっさにそう考えながら彼を見下ろす。


「その格好から察するに、お見合いだろう?」


着慣れていない着物姿で高級ホテルを歩いていれば、そう考えるのが自然だ。


「……ええ、まぁそうですね」


美華の答えを聞いて、彼がニヤッと笑う。ただその笑みは決して嫌なものではなかった。顔が良いのは、つくづく得だと思わずにはいられない。


「じゃ、その相手は今から俺ってことで」
「はい!?」


なにをとんちんかんなことを言っているのか。気は確かか。


「そうと決まれば行こうか」


なにをどう決めたのか。美華は、了承はもちろん返事すらしていない。
彼が立ち上がり、美華の手をとったまま歩きだす。