『美華、今どこにいるんだ』
変なことを聞くものだ。
「どこって、待ち合わせたホテルだけど」
約束の時間は午後一時。すでに三十分が経過している。
『竹下くん、美華が来ないって電話をよこしたぞー?』
「え? だって、今目の前に……」
そう言いながら見た彼の目線が、同じタイミングで美華のほうを向いた。
『そんなはずないだろう。電話がきたのはたった今だ』
それでは今、美華の前にいるのは誰だというのか。
スマートフォンを耳にあてたまま向かいの席を見ると、通話を終えた彼は口もとに手をあて笑いを堪えるようにしていた。肩まで小刻みに震えている。
「お父さん、とにかく切るね」
『あ、おい』



