溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


光風堂に博人が現れたのは、美華たちがコーヒーのお代わりを飲み終えたときだった。
これからふたりで映画を観にいく予定なのだ。

テーブルからその姿を見ただけで、鼓動が元気よく弾む。
美華を見つけ、博人は右手を上げて指先をひらひらとさせた。


「おっと、王子様のお出ましね。噂通りのイケメンだわ。美華、よくぞ射止めた」


茶化す鈴を軽く睨むが、顔が全体的に緩んでいるため効果はゼロだ。


「じゃ、邪魔者は退散いたしますか」


初対面同士の挨拶を交わした後、両手を振りながら店を出ていく鈴を見送り、美華たちもホテルのエントランスを横切る。


「今日は何種類食べた?」
「五種類」


博人の質問に右手をパーにして答える。
本当はもう少し食べてよかったが、ここへ来る前のランチにもケーキが付いていたため、さすがに食べ過ぎかと控えたのだ。