二十分ほど車を走らせ、美華を乗せた真知子の車が童話に出てきそうなあの店の駐車場に止まる。

真知子に促されて真っ暗な店内に入った。すぐに明かりがつけられ、テーブル席に案内される。
彼女は素早くコーヒーを淹れて出してくれた。


「この前は着物で、今日はワンピース。うちに来るときはおめかししているときね」


ふふふと笑う。
本当にその通りだ。でも、それもこれで最後だろう。


「そういえば今日は、博人の就任披露の日?」
「はい」
「あぁ、それで美華さんもお呼ばれしていたのね。もしかしてみんなの前で結婚の報告もしたの?」


博人からパーティーのことを聞いていたらしく、真知子が勘を働かせる。


「……はい」
「どうしてそこで落ち込むの。なにかあった?」


真知子はテーブルに両腕を置き、前かがみになるようにして美華を見た。