溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


戸惑う美華を否応なしに連れていく。
エレベーターを三階で降り、案内表示に従い鳳凰の間を目指した。

披露宴などで使われていると思われる会場付近には既にスーツ姿のたくさんの人がいて、チラチラと美華たちに視線を投げかけてくる。
おそらくビルドポートの社員たちだろう。口々に「社長だ」「隣の人は誰?」と囁き合う声が、美華の耳にも届いた。

鳳凰の間を通り過ぎ、木製のドアの前で立ち止まる。
この中に両親が待っているのか。

(どうしよう……。ありえないくらいに緊張してるよ……!)

美華の膝は震えてグラグラだ。

ノックをして博人と一緒に中へ入る。控え室なのか、大きな鏡と椅子が並び、奥にあるこぢんまりとしたソファセットで両親が立ち上がった。
博人同様に髪をオールバックにした父親は、皺こそあるが整った顔立ちでダンディな雰囲気を醸し出している。

隣の母親は金糸を使った綺麗な着物を着ており、艶やかな美女だ。


「は、は、初めまして! つ、鶴岡美華と申します!」


気が張り、つっかえながら自己紹介をする。