溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


そばで恐縮している小柄なスタッフに声をかけるが、美華はそれも慌てて引き留めた。


「あのっ、本当に大丈夫ですから。着替えなんてするほどじゃないです」
「いいえ、そうはいきません。濡れたままではお風邪を召されてしまいます」


この程度で体調を崩すほどヤワな身体ではない。なにしろ小学一年生から中学三年生まで、学校を欠席したことがないくらいに丈夫なのだから。


「外も暖かいし、すぐに乾いちゃいます。へっちゃらですよー」


四月に入り、昼間はポカポカ陽気が続いている。外を歩けば、濡れたのも忘れてしまうだろう。


「ですが」


相手も引かないが、美華だって負けるわけにはいかない。このくらいで替えの洋服まで用意させるなんて、とんだクレーマーではないか。

同じ押し問答を繰り返し、ようやく着替えはいらないと納得してもらったが、今度はクリーニング代を出すと言い張る。


「どのみち一回着たので出す予定ですから」
「その分をこちらでお支払いさせてください」