「あぁ、販促ツールのこと? 見に行ったのか」
美華の興奮がまったく伝染しない。博人は落ち着き払った口調だ。
「そうです! あんなに素敵なもの、初めて見ました!」
POPスタンドはよくある。サイン色紙があるのも見たことはある。
でも、絵本のモチーフを使った演出を見たのは、少なくとも美華は初めてだった。
「とりあえず少し落ち着こうか」
博人は穏やかに笑い、美華の肩に手を置いた。
落ち着いている場合ではないが、ここは静かな店内。お客がほかにいないとはいえ、大きな声は恥ずかしい。
「昔は仕事でも建築パースなんかをよく作ったから、あのくらいは手間じゃない」
サラッと言ってのける。
「でも仕事で忙しかったのに」
ドバイ出張の準備もあっただろう。



