「長崎県対馬の車海老に北海道産アワビ、福井県の原木椎茸、千葉県産の菜花、熊本県の赤茄子などが旬ですね」
「では、それをお願いします」
博人の言葉に料理長は「承知いたしました」と軽く頭を下げた。
食前酒で乾杯といきたいところだが、博人は運転があるし、この後は彼の両親への大切な挨拶がある。ふたり揃ってお茶で喉を潤し、料理長が車海老を下処理する様子を眺めた。
「俺の不在中はなにもなかったか?」
そう尋ねられ、大事なことを思い出した。
「博人さん!」
話す前から興奮し、大きな声で名前を呼ぶ。おかげで料理長の視線もチラッと浴びた。
「なになに、なにがあった」
博人は楽しそうにクスンと鼻を鳴らす。
「本屋さんです!」
「本屋がどうした」
「博人さんが作ってくれたんですよね?」



