溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


「藤堂様、お待ちしておりました」


顔なじみの店らしい。予約を入れてあるようだ。

落ち着いた上質な内装の店内は、明かりが数度落とされ、とても静かだ。カウンターが六席と個室がひとつだけというコンパクトさで、居心地がいい。
カウンターの中にいるのが料理長か、五十代前半の男性が真っ白な出で立ちで柔和な表情を向けた。


「急な予約なうえ、わがままを聞いてくださりありがとうございました」
「いえいえ、藤堂様にはいつもご贔屓にしていただいておりますので。どうかお気になさらず」


やはり普段はこの時間に営業していないのだろう。

(なにを食べさせてくれるお店なのかな)

博人と並んで座りカウンターの中に目を向けると、大きなボウルを横にしたような銅製の物体がある。

不思議そうにする美華の視線に気づいた博人が、天ぷらの専門店だと教えてくれた。
ボウルで油の飛び散りを防ぐのだろう。


「料理長、今日のおすすめは?」