溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


そこへ駆け寄り見てみると、手づくりのパネルやPOPスタンドには美華のペンネームと地元作家の文字が踊り、絵本の紹介がされている。サイン色紙もあった。

さらに大きな台の上にはなにでできているのかわからないが、森とワイヤーで浮かんだ月、動物たちが並んでいた。
『森に落っこちたお月さま』のモチーフを使ったものだろう。

あまりにも素敵なコーナーに言葉が見つからない。


「もしかして花村先生ではありませんか?」


呆然と立ち尽くす美華に声がかけられる。
ハッとして見てみると、そこにはあの夜の男性書店員がいた。

手ぬるい変装だったようだ。
急いで帽子を脱いで頭を下げる。


「はい。先日は失礼いたしました。いきなりのお願いだったのに、こんなに素晴らしいコーナーを作っていただきまして本当にありがとうございます!」


うれしさが声を弾ませた。