◇◇◇
翌日、美華は博人と行った書店に足を運んだ。
店員に正体がバレないよう帽子を目深に被り、顔の半分くらいを隠すという不審な様子なのは、花村ミカのコーナーがあるかどうかの偵察のためである。
とはいえ、もしも展開していなくても異を唱えるつもりはない。
あのときは作家本人が突然現れたため、気を遣ってやむを得ず了承した可能性もあるからだ。
誰かに見られているわけでもないのに、息をひそめ顔は前を向いたまま目線だけを忙しなく動かす。
真っ先に向かったのは児童書のコーナー。ところが、そこはこの前となんら変わらない売場だった。
(やっぱりそうだよね。そう簡単にフェア台なんて作ってもらえないよね)
美華は売れっ子ではない。
それでも少しばかり期待していたため、どうしても落ち込む。
ついでになにか本を買って帰ろうと考えていたが、そんな気分も失せた。
肩を落としながら書店を出ようとすると、視界の隅をなにかがかすめる。
何気なく目を向けると、レジ前の目立つ場所によく見知った本が並んでいるのを発見した。
(えっ、嘘……!)



