「俺、美華の書いた本、まだ読んでないんだ」
「あ、それはいいですから」
マネジメント系の著書ならともかく、子ども相手の絵本だ。博人が読むような内容ではない。
「妻になる相手の仕事も知らないで、夫だと胸を張るのはおかしいだろ」
目を細めて眉をピクリと動かす。
そんな様子がおかしくて、美華は思わずクスッと笑った。
「おい、なんで笑うんだ。俺は大まじめだぞ。ほかの男に力にならせるくらいなら、自分から動く」
そう言って立ち上がり、美華の手を引いて玄関へ急ぐ。
「ちなみに今晩の夕食は?」
「ビーフシチューです」
実家ではめったに出ないメニューだが、少しは社長の妻らしく、ちょっぴりだけ奮発して分厚い牛肉を買ったのだ。
「なら、温めなおせば問題ないな」



