お互いに頭を下げ、同時に顔を上げたところで目が合い、ふっと笑い合う。
「沙也加さん、本当にまた来るでしょうか」
竹下はたぶんもう会うこともないだろうが、彼女はどうだろう。
『出直して参ります』と断言していただけに、その通りに行動しそうな強い意志を感じる。
「俺も一度きっちり話そうと思う。美華を見習ってね」
いたずらっぽい目で微笑んだ博人は、美華の頭をポンポンとした。
「もう一度確認したいんですけど、博人さんは私でいいんですか? たくさんの従業員を抱えた社長なら、もっとこう立派というか淑女というか。沙也加さんみたいに静々としたおしとやかな女性のほうがお似合いのよう――」
のらりくらりと話していた美華の言葉は、強制的に止められる。キスをされたのだ。
軽くリップ音を立てて離れた博人が、憮然とした顔で美華を見る。
「俺が言ったこと忘れた? あの日、美華と話して〝この人だ〟って思ったんだって」
「……インスピレーションってやつですよね」



