沙也加はそんなふたりを見ても動じる様子がない。柔和な微笑みを浮かべたまま美華を見て、続けて博人を見る。
「聞けば、こちらの方とも出会ったばかりだとか。それなら相手が私でも同じようなものかと」
「うちの父があんな席を設けておいて悪いけれど、キミではなく彼女と結婚したいと思っています」
はっきりと言う博人に肩を抱かれた美華は、ハラハラした思いで沙也加を見つめる。表情ひとつ崩さない沙也加がどことなく不気味で、薄っすらと手に汗を握る気分だ。
「まだ入籍されていませんよね?」
「すでに記入してあります」
「それなら間に合いますから」
「……俺の話、聞いてる?」
博人がそう尋ねたくなるのも当然だ。沙也加との会話がいまひとつ噛み合っていない。
沙也加は「はい、聞いております」と静かに目もとを細めて頷いた。
「もう一度言うぞ。俺はここにいる鶴岡美華さんと結婚するんだ」
丁寧口調では埒が明かないと思ったのか、それとも不満が募ったのか、ざっくばらんな言い方になる。



