溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


博人と名字が違うから親戚ではなく友達なのか、それとも母方の親戚なのか。
様子を伺うように沙也加を見ていると、彼女はふわりと微笑んで首を傾けた。


「博人さんがお帰りになるまで待たせてくださいね」


そう言って、了承も得ず奥へ足を進める。


「えっ、あ、はい……」


一応は住人である美華が、パタパタとスリッパの音を響かせて沙也加を追いかけた。

リビングに入るや否や、勧めてもいないのにソファに腰を下ろした沙也加が興味深そうに部屋をキョロキョロと眺める。

お客だからお茶でも出そうかとキッチンへ行きかけたところで、リビングに博人が現れた。
自分で鍵を開けて入ったのだろう。今思えば家主はインターフォンを押さないだろうから、沙也加が来たときに博人だと思ったのは大きな勘違いだったわけだ。

しかし博人ときたら、沙也加を見ても反応が薄い。

(あれ? 知り合いじゃないの? 私、見知らぬ人を家にあげちゃった? あ、でも博人さんの名前は出していたよね)