『博人さんはいらっしゃいますか?』
言い方まで険がある。
「えぇっと、もう間もなく帰る頃だと思いますが」
『では中で待たせてください』
誰だかわからない相手を部屋にあげるのはどうかと悩んだが、もしも親戚や大切な友人だったら失礼になるだろう。
博人もすぐに帰るしと、セキュリティを解除して女性が上がってくるのを待った。
三分と経たないうちに二度目のインターフォンが鳴る。玄関で待ち構えていた美華は、ドアを開けて目を二倍にも大きくした。
やってきた女性が着物姿だったのだ。
美華と同じくらいの歳か。爽やかなレモンイエローの生地にサックスブルーの帯が映え、凛とした空気を放つ。
長い黒髪をハーフアップにし、色白で日本人形のような顔立ちだ。
「はじめまして。真行寺沙也加と申します」
鈴のような涼やかな声で自己紹介した彼女に、美華も「鶴岡美華です」と名乗る。



