「竹下じゃないか。こんなところでどうしたんだ」
「ちょっとね。それよりそっちは?」
「ビルドポートの藤堂社長の取材。って、面識あるのか?」
博人と竹下を交互に見やり、不思議そうな顔をする。
どうやらふたりは顔見知りらしい。会話の内容からすると、同じ出版社の同僚か。
竹下は曖昧に答え、水をひと口飲むと席を立った。
「それじゃ、僕はこれで失礼します」
美華も慌てて立ち上がり、頭を下げる。
「本当にすみませんでした」
それに答えるでもなく、竹下は伝票を持ってテーブルから離れていった。
「美華、帰ったらじっくり話そう」
〝じっくり〟部分を強調し、博人が微笑む。
「……じっくり?」
「そう、じっくりね」
目が笑っていないように見えて気持ちが焦る。
博人は美華の頭にポンと手を乗せ、顔を覗き込むようにして言うと、表情を仕事モードに切り替えた。



