溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜


どことなく博人から威圧感を覚える。美華の知る軽い調子の博人とは違っていた。

(やっぱりなにも言わずに会っていたから怒ってるのかな……)

芸能人でこそないけれど、大企業の社長である博人は著名人。その人の妻になろうという者が、男とふたりで会っているのをどこで誰が見ているかわからない。
ふたりの結婚はまだ周知されていないとしても、迂闊な行動だっただろう。

怯んだ竹下も、負けずに名刺を取り出した。


「出版社の方なんですね」
「児童書も扱うようになるので、美華さんの力になれるかと思ったんです」
「それはお気持ちだけで。ね? 美華」


目線を投げ問いかける。
やわらかい口調なのにNOとは言えない強い視線だった。

居心地の悪い空気が漂う中、不意にタタタという足音が聞こえてきた。


「藤堂社長、お待たせして申し訳ありません!」


待ち合わせなのか、肩を弾ませた男性が博人に駆け寄る。ふと美華と竹下を見て、「あれ?」と声をあげた。