「あの……あなたは?」
狐につままれたような顔で竹下が尋ねる。
「えっと、こちらは」
「美華の夫です」
紹介しようとした美華を遮り、博人がきっぱりと答えた。
ちなみに正式にはまだ夫ではない。婚姻届は、まだ自宅だ。
「博人さんがどうしてここに?」
「仕事だよ。会社はこの上にある」
そう言って博人は人差し指を上に向けた。
初対面のときに名刺をもらっていたが、社名を見たところでストップ。所在地まで目が行き渡らなかった。
博人の口からも、会社に関する詳しい事情をまだ聞いていない。
そもそも知らないことのほうが多いのだ。夫婦未満どころか恋人、いや友達の域にも達していないだろう。
「それじゃ、あなたが僕と間違えて美華さんが会ったという方なんですね」



